音響の現場で最初に教わることのひとつが、ケーブルの巻き方です。
「巻き方くらいで何が変わるのか」と思われるかもしれませんが、これを知っているかどうかで、ケーブルの寿命が何倍も変わります。しかも当日の設営スピードにも直結します。
そしてこの方法は、延長コードでも掃除機のコードでもイヤホンでも使えます。覚えておくと私生活でも役に立つので、イベントに関わらない方にも読んでいただきたい内容です。
その巻き方、ケーブルを傷めています
多くの人がやっているのが「順巻き」です。同じ方向にくるくると輪を作って巻いていく、あの巻き方です。
これがケーブルを内側から壊します。
なぜ順巻きがダメなのか
ケーブルの中には、芯線とシールド(網状の被覆)が入っています。外から見えないので意識しづらいのですが、ここが重要です。
同じ方向に巻き続けると、内部にねじれが少しずつ蓄積していきます。1回や2回では分かりませんが、巻くたびに溜まっていきます。
その結果こうなります。
- ケーブルがくるくるとねじれて、まっすぐ伸びなくなる
- 伸ばすときに絡まる・キンク(折れ曲がり)ができる
- 内部のねじれが接触不良を起こし、ノイズの原因になる
- 最終的に断線する
順巻きで巻いたケーブルを床に置くと、バネのように跳ね返ろうとする力が残っています。あれが、内部に溜まったねじれです。
八の字巻きのやり方
解決策が「八の字巻き」です。英語では over-under(オーバーアンダー)とも呼ばれます。
原理はシンプルで、1周ごとに逆向きの輪を作り、ねじれを打ち消し合わせるというものです。
手順
- ケーブルの端を利き手と逆の手で持ち、輪の起点にする
- 1周目は普通に外向きの輪を作る(順巻きと同じ)
- 2周目は手首を逆にひねって、逆向きの輪を作る
- 1周目・2周目を交互に繰り返す
- 巻き終わったら、束の1〜2箇所を紐やベルクロで留める
ポイントは3番目の「手首を逆にひねる」です。ここが唯一のコツで、最初は違和感がありますが、10回もやれば体が覚えます。
正しく巻けていれば、束を床に置いたときに跳ね返る力がありません。これが判断基準です。ぐにゃぐにゃと落ち着いていれば成功です。
展開するときが、いちばん違いが分かる
八の字巻きの真価は、伸ばすときに出ます。
束を持って、反対側の端を投げるだけで、まっすぐ伸びます。絡まりません。
現場では、これが設営スピードに直結します。順巻きのケーブルは伸ばすたびに絡まりをほどく作業が発生しますが、八の字巻きならその時間がゼロになります。ケーブルが10本あれば、その差は歴然です。
日常でも同じように使えます
この巻き方は、音響ケーブルに限った話ではありません。
- 延長コード・電源タップ — 一番効果を実感しやすい
- 掃除機のコード
- イヤホン・充電ケーブル — 断線しやすい細いケーブルほど効きます
- LANケーブル
- ホース類 — 水道ホースにも同じ理屈が使えます
「よく断線する」と感じているケーブルがあるなら、まず巻き方を疑ってみてください。製品の品質ではなく、扱い方が原因のことが少なくありません。
マイクケーブルはカナレがおすすめ
ケーブルそのものの選び方にも触れておきます。マイクケーブルはCANARE(カナレ)を選んでおけば間違いありません。
定番はL-4E6Sです。4芯構造の電磁シールドケーブルで、ステージやレコーディングスタジオで広く使われている、カナレを代表するモデルです。
- 柔らかく、八の字巻きがしやすい — 硬いケーブルは巻きにくく、癖もつきやすい
- 耐久性が高い — 持ち運びの多い現場向き
- 音に余計な色がつかない
- 安価で入手しやすい — 切り売りでも既製品でも手に入ります
「柔らかい=扱いやすい=長持ちする」という関係があります。硬いケーブルは巻くときに無理な力がかかり、それ自体が傷みの原因になります。カナレが現場で選ばれ続けているのは、この扱いやすさが大きいです。
ケーブルを長持ちさせる、その他のコツ
- コネクタ部分を持って抜く — ケーブルを引っ張って抜かない。断線の最大の原因です
- 巻くときは、無理に小さく巻かない — 直径が小さいほど内部に負担がかかります
- 踏まれる場所には養生する — 屋外の動線を横切るケーブルは、マットやテープで保護を
- 濡れたまま巻かない — コネクタ内部が腐食します
- 本番前に必ず導通を確認する — 予備を1本持っておくと安心です
まとめ
- 順巻きは内部にねじれを溜め、断線の原因になる
- 八の字巻きは、1周ごとに逆の輪を作ってねじれを打ち消す
- コツは「2周目で手首を逆にひねる」だけ
- 正しく巻けていれば、床に置いても跳ね返らない
- 投げるだけでまっすぐ伸びるので、設営が速くなる
- 延長コードや掃除機のコードなど、日常のケーブルすべてに使える
- マイクケーブルはカナレ L-4E6Sが定番。柔らかく巻きやすい
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